シャーロキアンの冒険

元出版社の販売営業マンの備忘録です。

ジェットコースターを楽しめる人と怖がる人のストレス耐性 ~電通の長時間労働問題~

人間の脳には不安や恐怖を感知する扁桃体という部位があります。この扁桃体が身の危険を察知する、言わば防衛機能として備わっています。個人差がありますが、人は大なり小なり恐怖を感じ、不安感を持つことで生き続けることができます。

たとえば、目の前にいきなりナイフをかざした人物が現れれば、ビックリして大声を出したり、身構えたり、とっさに逃げだしたりするでしょう。恐怖のあまりその場で硬直して立ちすくんでしまうかもしれません。

但し、これは正常な脳の働きによる行動です。逆に恐怖も何も感じない人がいたなら、そちらの方が問題です。

そしてこの扁桃体が過敏に働き過ぎた場合、前頭葉から指示が出て興奮状態にある扁桃体の動きを制御し、冷静さを取り戻すという仕組みになります。脳内ではこのような動きをしています。


さて、ジェットコースターに乗った場合、恐怖感はあるものの両手を挙げて喜ぶことが出来る人。逆に目をつむってしまいガチガチにからだが固まる人。大きく分けるとこの2種類のパターンが出ます。これは先に述べた脳内での動きの差によるものです。扁桃体がどれくらい敏感に反応するか、また、前頭葉がすぐさま制御運動を行えるか、ここに個人個人の差が出て、楽しめる人と怖がる人に分かれます。

この脳の機能は生まれついて持っているものですので変えることはできません。鍛えれば強くなるのかというと、ジェットコースターを例にすると、何度も乗って「慣れる」程度です。

ストレスというのは、この不安感や恐怖感、あるいは緊張。このようなものにからだが晒された場合、出てくるわけですが、人の脳には個人差があります。このストレスに強い人がつまりストレス耐性がある人です。少々のことではからだはへこたれません。他には、言いたいことがあるが反論できない性格だったり、考え込み過ぎる性格などもストレスを作ってしまう要因になります。


そこで、仕事におけるストレスを考えた場合、「長時間労働」という言葉にストレスを感じる人は、ほとんどいないと思いますが、仕事内容によっては「緊張」「不安」というものが、いろんな場面で出てきます。業績を左右するような仕事もあれば、プロジェクトが成功するかどうかという重大な局面に立たされることもあるでしょう。

このようなことがたとえ短時間であっても毎日起きれば、人の脳はストレスを感じ続けることになります。そして性格的に受け身であったり、問題を一人で抱え込んでしまうタイプの人もからだにストレスを溜め込んでしまいます。


また、受け身の性格でなくとも、部下であれば上司に逆らうことはなかなか難しいことですし、相手が社外取引先の人であれば、これも難しい立場になりストレスを溜めることになります。

以前に述べたように、ストレスが続けばノルアドレナリンが不足し、抑うつ症状を引き起こします。そして前述したようにストレス耐性には個人差もあります。加えて長時間労働ともなれば、ストレス耐性が少ない人でノルアドレナリンが不足した場合、非常に危険な問題になります。

monthly-shota.hatenablog.com
こちらで広告業界の凄まじさを紹介され話題となりました。私は出版社の営業でしたから徹夜になることはありませんでしたが、編集部では締め切りに追われ始め出すとやはり同じように大変なストレスに晒されます。徹夜は当たり前という状態です。紙媒体ですから一度、印刷してしまうと修正はできません。ギリギリの緊張感の中での仕事になります。

ただ、何度も述べているように人のからだのストレスに対する防御は、前頭葉扁桃体を制御することだけです。そしてノルアドレナリンが不足すると危険な状態に入ります。これが長時間続けばストレス耐性のある人でも危険かもしれません。

これはどのような職業でも同じです。特にストレス耐性が少ない人の場合、既定の8時間勤務であろうと関係ありません。本人にとってはたとえ1時間の緊張状態でもからだに掛かる負荷は大変なもののはずです。性格や立場による場合も同じことがいえます。

残念ながらストレス耐性は生まれ持って個人差があり、鍛えれば耐性が付くというものではありません。多少、慣れることで緩和される程度です。

大事なことは、ストレスの発散です。今のところこの方法しかありません。出来る限り緊張をほぐす努力をしないと、後になってからでは間に合いません。今回の電通社員の方は大変に気の毒なことです。

仕事はジェットコースターに一回乗るだけというものではなく、定年退職まで続けるとなれば40年間にも及びます。人の脳はいつオーバーヒートするか予想することは出来ません。

己の身は己で守る。出来ることはこれだけです。

以上、今回の備忘録でした。